こちらは出張型M性感エステ「いろめき」のセラピスト・新宿オミナが、2025年に公開した日記です。
「富山の人じゃないんですね?」とたずねられたら
「そうなの、東京から来ています。でも富山が好きで、富山を選んで、ここにいるのよ。出稼ぎというには愛しすぎてしまっているの」って答えたい。
「みんな、出稼ぎで、一週間くらいしたらいなくなってしまう。いろんな人が来るなあって思いながら見ていました、僕は富山を出たことがないんです」なんて言いながら、はずかしそうに、壁を向いて、おぱんつを下ろす男の子。
「うしろで・・・感じてみたいんです」って目を伏せて言う顔を覗き込んで、「あら、うしろって、アナルのこと?」ってはっきり言ってもっと恥ずかしがらせたくなっちゃう。「プロだっていうから」って指名してくれる きときと男子くんに、「どうもぉ、東京から来ましたぁ❤️」って指挿れしちゃうの、興奮するけど、本当は私、「東京から来ました」ってつもりでいないのよ。
「新宿から来ました」って思ってるの。
新宿は宿場町だった昔から、みんなの「新しい宿」でありつづけたまち。トー横がまだなかったころにもコマ劇があって、家のない子たちが身を寄せ合っていたまち。日本にレインボーパレードがあかるい虹をふりたてて「LGBT!ダイバーシティ!」ってなるずっとずっと前から、もと赤線の、日陰のエロがあって、生まれたまちでは「変態」と指さされた人たちが身を寄せ合ってきたまち。
新宿区も、少し歩けば東京の田舎で、わたしみたいに、プロ痴女なんていう生き方をえらんだ女が、歌舞伎町まであるいていける賃貸物件に住みつけば、古くからの一軒家に住んでいるひとたちがひそひそと聞こえるように悪口を言っているのが聞こえたりする。わたしは近寄って行って「こんにちは!」とあいさつします。15歳から接客業だからね、笑顔は得意よ。ちゃんと話せばわかるけど、みんな、知らないものがこわいだけなのよね。だからとりあえず敵認定して、あれやこれやと憶測をいう。
文科省認定教科書による中学校保健体育では絶対に習わないであろう、「知らないエロ」に飛び込んでくる男の子たちの勇気を、わたしはこころから、たたえたいきもちでいるのよ。
わたしだって、まだ生きている以上は修行中の人間だからね、よわいところがあるものだから、「ぜんぶ知っているのよ」みたいな顔をしたくなる。かっこいいふり、したくなります。強いふり、したくなるんです。
でもその気持ちをなんとか抑えて、こういうスタンスでいるの。
「あなたがあなたの体をもっと知っていくお手伝いをわたしにさせてね」って。
ちまたではドライオーガズムとか、お尻でイくとか、いろんなこと言われるけど、それは、みんなの経験を、ある程度の共通点でもって、ある言葉でまとめて共有しやすくしたものにすぎない。だってたとえば、「家族」ということばでよばれるものの中身、みんなちがうでしょ。「恋愛」という言葉で呼ばれるものの中身もみんな違う。
そういう中で「オーガズム」って呼ばれるものの中身だって、同じ人の体でも、一回一回、ちがう。寄せては返す波のひとつひとつがほんとうは二度とと再現されない一度きりのものであるのと似ている。男性は射精があることでわかりやすく「イッた、イかない」を視認する思考になりやすい構造の体をしてるけど、じゃあ、今までの射精の数々を思い出してください。ね。同じ射精はふたたびとないでしょ。
でもそういうこと、ひとつひとつていねいに感じていたら、「自分だけじゃないか」っておもっちゃうのよね。その経験を他者と共有できない。「自分だけがみんなとちがうんじゃないか」という不安におそわれる。エロに限らず、あらゆることで、その「自分だけがみんなと違うんじゃないか」の不安からのがれたさに、「みんな吸ってるから」という理由で煙草を吸ってみたりなんかする。みんなとおなじ何かにしびれて、いつのまにか、「個として感じる」ということをわすれていくのよね。「みんなと同じように平気な顔をしていられる」ということを、ともすると、「強くなる」ということだと、思ってしまったりして。
風俗のキャストとしてお客様に分けていただける時間は、お客様が生きてきている時間のほんのひとかけらです。たとえ120分コースで100回指名をいただいたとしたって、200時間にすぎない。10日間にもならないのよ。そういうなかで、お客様が「この体でどういう道を歩んでいらして、どこに進みたいのか」を考える。「あまり感じないようにすることで強くなったような、強い衝撃をただただ受け止めてきたような体」っていうのは、やっぱり、性感をやるときだって、「もっと強く、もっと激しく」ってなってしまったりする。キャストだって短い時間で興奮していただくために「マゾ!変態!」って罵倒しながらガシガシしたりする。
でもそれを続けるとね、やっぱり、「どんなひどいことされてもそれを快楽に転換できる俺」になって行っちゃうだけだなあって思うんですよ。それを本心から望んでいらっしゃるならそれにお付き合いするだけだけど、私はなんかもう、ね、こう伝えたくなっちゃう。
「あなたがどんなひどいことされたって、あなたくらいはあなたを大切にしていいじゃない」
何度も繰り返すけど、自分で出せる快楽物質ともいえるセロトニンはほとんどが腸でつくられています。それから性的な感度といわれるものの正体は大概、体温、血流、体液の流れ、そういったものです。だからなにがいいたいかっていうと、本当に気持ちいい体になるには、お水を飲んで、腸内細菌の栄養になるような旬の新鮮な食べ物をバランスよくいただいて、お風呂で体を温める習慣を持って、眠る前に気持ちいい伸びをするだけでもいい、ストレッチをする。普段から体をほぐす。そういうことになってきます。
新宿の夜のまちというのは、「変態が普通」のまちなのね。新宿の夜のまちに、新宿生まれのひとってほとんどいないの。なんらか、自分の生まれたところで、「おまえは変だ」って指さされるような何かがあって、それで、新しい宿を求めて逃れてきた人たちばっかりだなって、私の目にはそう見えるの。それで「変態ですけど何か?」って、ねむらない街をぴかぴかさせる。私は新宿が好き。臭いけど。
富山の空気は、きれいねえ?
都会は国家の元気玉。
国家としての競争力をもつために、オラに力を分けてくれえ!って、いっぱいいっぱい吸い上げて、それでほら、最低時給全国最高。はっきり言って吸われる側の富山で、働く男のひとたち、ひとりひとりの体が、どんなふうに扱われてきているのかを、ラブホで目の当たりにする日々です。
「ちんちんをこんなに大切に扱ってもらったことなかった」
「S嬢さんにこんなにやさしくしてもらったことってないよ」
入店直後から言っていただくことです。うれしいけど、わたし、やさしいから、つめたいわよ。あなたがあなたを大切にしてちょうだい。まずは。この世のなかがあなたをどんなふうに扱ったとしたって、あなたの体とずっといっしょにいるあなた自身くらいは、あなたを大切にあつかっていいはずでしょって、思い出してください。体の感覚で。ほら、大切に、ていねいに、おねがいごとを口にして、求めて、与えられるって、こんなに、気持ちいいわねえ。
ほんとうは何を求めているの?
曲がりなりにもエロのプロとして申し上げますが、ほんとうの快楽の境地ってね、「責める/責められる」とか、「求める/与えられる」という関係性すらも飲み込んで溶かすような大きい熱波なのよ。たとえていうならそれって、「求めて、求めて、求め続けた結果、ほんとうはもう与えられていたことに気づいた」みたいな一体感なの。だからね、どうか、「お金払うからおしりさわらせて」みたいな境地は早いとこ脱して、ちょっと、気持ちよく伸びをする。ちょっと、気持ちよく深呼吸する。そういうところからぜひ、はじめてみてください。あのね、ほんとは、イくために気持ちいいことをするんじゃないの。気持ちいいことをエロに限らず日常から重ねていって、あふれるように、あるとき、イくのよ。
生きてる限り、間に合うからね。